愛のない男

DVDを見ていたら、元夫のことばかり考えていた気持ちが軽くなりました。
DVD借りていても、どよーんとしたまま放っておくようなこともたまにはあるし、
今回もそうなってしまいそうだったけれど。
少し重い腰を上げてDVDをセットするだけで、ずいぶんかわるものなんですね。
やっぱり気晴らしって必要なんでしょうね。


…それに、明日から2連休だし!と思って。
手始めにとPCの前にどっぷりと陣取って、
来週のピアノ発表会のあとの宿泊場所をonline予約していたところ、
携帯に着信がありました。
見慣れぬ番号。


はいもしもし、と出たら、「もしもし。もしもし」と男性の声が。


え?男?誰?


「もしもし。○○です」
その声の主が分かった瞬間、少し心臓が縮んで、顔が熱くなった。
元彼でした。

6月に着信拒否してから、その存在すら忘れていた(ひどっ)のですが
この前機種変更したから着信拒否がリセットされたのね、と悟りました。


どうしたの?
ときくと、
「あれからずっと考えていたんだ」
と。


何を?
「かのちゃんが言ってたことを。真剣に付き合いたいと思って」


それってどういうこと?
「もっとちゃんと……結婚を前提として付き合いたい」


えええ????
「俺今まで自信がなくてちゃんと言えなかった。
今の仕事…今の会社に就職して初めて3年続いたから…
そういうことも考えられるようになって…だから」


突然言われても……今までのことが頭をよぎるのと同時に、
彼と暮らしたり育児することなんかを想像しても全然現実味が湧かなかった。
「○○くんとはそういうことを考える気になれません」


それでも彼は電話を切ろうとはしない。世間話で繋ごうとしてくる。
「秋だねー」
「寒くなったね。」


沈黙…


「かのちゃん、最近どっか行った?」
「行ったよ。富山。ミスチル見に。」
「ふーん、コンサートなんだね」


沈黙…


「俺夏にどこも行かなかったよ。かのちゃん海行こう」
「やだ」
「じゃ、山行こう」
「○○くんとはイヤ」


沈黙…


「じゃ、かのちゃん、どこ行きたい?どこ行きたかったの?」
「○○くん、めんどくさくないの?」
「俺全然めんどくさくない」
「別にどこも行きたくないよ」


沈黙…


「かのちゃん、誕生日迎えた?」


あ、覚えてないんだな…
「迎えたけど」
「いつだっけ」
「9月11日」
「もう過ぎちゃったじゃん。お祝いしよう。何欲しい?」
「別になにも」
「だってクリスマスにかのちゃんにもらったもん…そうだ、クリスマスしよう、
 クリスマスプレゼント買いにいけなかったもんね。何か買ってあげる」
「別になにもいらないよ」
「かのちゃんにもらったのに。シャツ」
「そのときはそのときだよ」


沈黙……



「かのちゃん、好きな人いる?」
「いないよ」
「寂しくないの?」
「寂しいよ。そりゃ。」



「電話、切ってもいい?」
「俺じゃだめってことですか?」
「そうだよ」


沈黙……


「かのちゃん、仕事つらくない?」
「そりゃつらいさ。でもつらいだけじゃないし」
「寂しくない?つらくない?」


とぎれとぎれの沈黙をなんとかしたくて、私は彼に言いました。
(そうでないと電話を切ってくれなさそうだと思って)
「あのねー。ぶっちゃけて話していい?」
「なに?」
「あのね、私なんて、寂しいにきまってるのよ。だって離婚してるんだし。
 寂しくない人なんていないよ?
 しかも、元のダンナに未練だってあるんだよ。つらくないことなんてないんだよ」


「そうかーかのちゃん。寂しかったんだね?」
「そうだよ?」
「寂しかったんだね。うすうす感じてたけど。」
「そうだよ」
「そんなにずっと好きな人がいて…俺のことは好きだったの?」
「好きになろうとしたけど…ダメだったみたい」
「好きじゃなくても付き合えたの?」
「だって一人は寂しかったし、そういうときに近づいてくる人がいたから…」
「そうか…比較されているのは薄々感じてはいたけれど、俺はダメだったということかー。
 俺なんかいいとこないしなー。そんなにいい人だったんだな」
「なんでだよ(笑)」
「だってかのちゃん全然その人の悪口言わなかったじゃん。普通は離婚したら、少しでも言うでしょ。
 そんだけいい人だったんだよ」


瞬間、ぶわっと涙が出てきて、電話口ですすり泣いてしまいました。
「そうか、そうか、そんなに好きだったのか」
「(泣)」
「そんなに好きだったら、いつかきっと戻ってくるよ」
「(さらに泣)でもそれって、すごく不毛だと思うよ」
「でもそんなに好きな人がいるのは、いいことだよ。将来幸せになれるかは別として」
「そうでしょ?わたしも頭ではそう理解してるんだけど、ダメなの」
「でもいつかいい人に出会えるよ。ほんと。」
「えー。そうかな。」
「そうだよ」
「私、ずっと一人でいるんじゃないかと思うよ」
「大丈夫だって」


それから…、
キレイに電話を切った気がします。元気でね、じゃあね、と。


彼のことを信用ならないと思っていたけれど、最後泣かされましたね。
わたしもなんだか彼にひどいことをした気がしました。
ごめんね(彼は読んでないけど)
彼とは友達としてならちゃんと付き合えそうな気もしたけれど、それはそれですよね。
これから男の人と出会うことがあったら、
離婚のことは躊躇しつつもぶっちゃけていこうかな、と思いました。
それで離れていく人はそれだけなんだと。